Jakarta Commonsによるネットワークプログラミング

2. Jakarta Commons
今回は，Jakarta Commons を用いたネットワークプログラミングを取り上げます．サーブレット実行環境のTomcat，ポータルサイト構築環境のJetspeedなど，Jakartaプロジェクトの多くは特定領域の技術にフォーカスしたプロジェクトですが，Jakarta Commons はそれとは異なり，再利用可能なコンポーネントの開発にフォーカスしたプロジェクトです．
実際のところJakarta Commonsは，独立したプロジェクトにするほどの規模でない小規模なプロジェクトに活動の場を与えるといった意味もあり，ほかのプロジェクトで開発されていたコンポーネントの一部が，その再利用性の高さからJakarta Commonsに移されたり，あるいはここで成長したプロジェクトが，Jakarta Commonsから離れ，独立したプロジェクトに移行する場合もあります．
もともとの目的がコンポーネントの再利用を目指したものであるため，Jakarta Commonsでは，大規模なフレームワークを提供するものではありませんが，内容を把握しておけば，必ず利用できる場面があると思います．実際，Jakartaのほかのプロジェクトの多くが，Commonsのプロダクトを使用しています．今回はCommonsを使ったネットワーククライアントプログラミングに絞ってその使い方を説明します． Commonsには多くのサブプロジェクトがありますが，今回取り上げるのは，さまざまなネットワークプロトコルのクライアント技術の実装であるNet（以下， Commons Netと記述します）と，HTTP（Hypertext Transfer Protocol）のクライアント技術の実装である HttpClientです．

2.1. Commons Net
Commons Netは，さまざまなネットワークプロトコルのクライアント技術を実装したJakarta Commons のサブプロジェクトです．もともとORO社により開発されたライブラリでしたが，ORO社の解散によりその開発がJakarta Commonsに移されました．このプロダクトは，各種ネットワークプロトコルに基づく基本的なプログラミングを可能にすることを目的としており，プロトコルに近い比較的低レベルなAPIの集合です．
Commons Netがクライアント技術を提供している主なプロトコルを以下に示します．

表1 Commons Net が対応するプロトコル

Finger

Whois

TFTP

Telnet

POP3

FTP

NNTP

SMTP

Time

Echo

Rlogin

Rexec

Rdate

Whois，Telnet，POP3，FTPなどはWindowsユーザにもおなじみのものです．Rlogin，Rexec，Rdate などRコマンドは当初BSD系のUNIXに実装されていたネットワーク技術で，現在ではLinuxを含む多くの UNIXで使用できます．今回は，この中から比較的利用されることが多いと思われるFTPとTelnetを取り上げます．
FTPやTelnetプロトコルは，比較的単純なプロトコルであり，その機能を実装するライブラリを独自に開発するのもそれほど大変なものではないと思われるかもしれません．しかし，これらのプロトコルであっても，プロトコル仕様を完全に理解しそれを満たす，汎用的ライブラリとして開発するのは困難な作業です．本稿では，Commons Netの提供するクラスライブラリを通して，FTP，Telnetのプログラミング方法を見ていきます．

2.2. HttpClient
HttpClientは，Jakarta Commonsのサブプロジェクトで，HTTP クライアントを実装する技術です． HttpClientは，もともとWebDAV機能を開発しているJakarta Slideプロジェクトの中で開発されていましたが，再利用可能なコンポーネントとしてJakarta Commonsに移動し，開発が継続されています． J2SEに含まれるjava.netパッケージにも，HTTPプロトコルを処理するためのクラス（HttpURLConnection 等）がありますが，これと比べて高レベルなAPIを提供しています．Commons Netが提供しているクラスライブラリが比較的プロトコルに近い低レベルなライブラリでしたが，HttpClientは高レベルな機能も提供しています．
本稿では，Commons Netと併せてHttpClientを使用したプログラミング方法も解説します．

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